私たちは、怒らなければいけない 6
支援を受ける人がどのような人か、どんな生活を送りたいと思っているの
か、これを考え続けることが、どんな福祉サービスであっても支援する側の
基本姿勢であるはずです。
特に養育園は児童の施設であり、そこには一人ひとりの成長を支えていくた
めの関わりが欠かせません。
自傷や他害といった行動の背景を解明していくには一定の専門性や時間が
必要ですが、証言に立った職員や関係者の言葉からはその必要性の自覚も
努力の影も感じられず、あたかも自傷他害等が本人の生来性な特性で、
これを「力と薬で抑えつける」ことが正しい仕事であるかのようでした。
管理者の責任放棄
本来、職員や関係者は、こうした支援の基本的姿勢や考えかた、具体的な
支援方法を研修など様々なかたちで学んでいきます。しかし、研修について
の職員の証言では「受けていない、リーダーの話しを聞くくらい」「施設長
から聞いたことはあるが、内容は覚えていない」と、まったく意味をなして
いなかったことがうかがえます。あるべき支援のあり方が共有されない一方
で、一部の職員間で暴力が正当化されていったと考えられます。
本来、無知ゆえに暴力に頼る「負の連鎖」を正すのは管理職や経営者の
責任です。しかし施設長は、職員が支援を学ぶ体制ができていなかったと
認めながら、2011年に発生した別の虐待事件(職員が入所者にドライヤー
を故意に押し付けて火傷させたとされる)」で内部告発を受けていたことにつ
いては告発内容を「覚えていない」と証言し、その後も「支援員には注意と
講習をして終わった」と形式的な対応しかしていませんでした。支援体制に
ついても、現場の管理は管理職ではないリーダーの職員に任せきりにし、
職員が手薄になると建物を施錠して入所者の行動を制限していたとされます。
第三者検証委員会の報告書(以下、報告書)もこうした点を問題視し、
「適切な支援は何かについての知見がなかったと疑わざるを得ない」と
指摘しています。
施設長の上司にあたり、法人内の複数の施設を管理する立場にあった
センター長は、自身も現場職員だった時代に虐待に手を染め、懲戒処分を
受けた人物でした。
報告書では養育園2寮に専門性や支援技術の乏しい職員らを多く配置していた
ことについてセンター長の失態と指摘し、また虐待防止委員会などの会合が
このセンター長を実質的なトップとして運営されていたことでチェック体制
が機能していなかったとしています。
千葉県からの「天下り」だった理事長についても、報告書では「もとより
障害福祉に通じておらず、また、虐待防止の意識が低かった」「自ら現場の
実態を把握することなく、部下に任せきりにしていた」とされます。職員を
育て、体を張って施設での支援を正しい方向に導くはずの管理職が、逆に虐待を生む
「負の連鎖」を助長する存在だったわけです。
つくられた行動障害
被害者の母親の証言に目を戻します。被害者自身の障害はもともと軽く、
入所先も当初は軽度者中心の4寮でした。これが後に行動障害のある人中心
の2寮に移されます(時期は不明)。さらに、高校生の頃から行動が変化
したとされます。
行動障害の中には周囲の関わりや環境が本人に合っていないことなどで起きる
二次的なものが少なくありません。特に思春期の関わりは重要で、このこと
から被害者の変化、事象他害といった行動の出現には養育園で受けていた
不適切な関わりが影響していた可能性が高いと考えられます。
言葉で訴えることのできなかった被害者は、尊厳を踏みにじられた悔しさ
を自らの体を傷つけ、周囲にぶつかることで表現していたのかもしれません。
その原因だったであろう職員たちは、それを力でねじ伏せました。これに
対し、裁判で自省や被害者への謝罪を口にする職員や関係者はほとんどいませ
んでした。
続)
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コメント
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相手の事を考え 思いやり 接してくれる職員さんって ほんの一握りしかいないと思う。。。
投稿: 音姫 | 2015年7月26日 (日) 06時34分
我々は そんな立派な人格者ではありませんからね 家庭では父親を演じ
職場では それなりの立場を演じ 飲み屋では・・・演じる必要は無いか?
ただ きちんと分別をつけて 今はどういう立場なのかをわきまえて
生活やら仕事をしなきゃならんということだと思うんです
あ・そうだ 17時に新記事出ますんで よろしく(◎´∀`)ノ
投稿: カブ | 2015年7月26日 (日) 06時58分