「すべては仮初めの幻」
長く生きれば、「得る」こともあるだろうが、それ以上に「失う」ものも多いのだ。
それが中年以後の宿命である。
新約聖書の中には、四つの福音書と共に、十三通の聖パウロの書簡が含まれている。
聖パウロはいわゆる十二使徒ではなかったが、初代教会を建てる上で最大の功績が
あった人である。しかも聖パウロは、実に表現力の豊かな人であった。
その文章はいたるところで深く人の心を捉える。そして聖パウロはまさに中年以後
の人に対しても、心を抉(えぐ)るようなすさまじい言葉を贈っている。
「兄弟たち、わたしはこう言いたい。定められた時は迫っています。今からは、妻の
ある人はない人のように、泣く人は泣かない人のように、喜ぶ人は喜ばない人のように、
物を買う人は持たない人のように、世の事にかかわっている人は、かかわりのない人の
ようにすべきです。この世の有様は過ぎ去るからです」
(コリントの信徒への手紙一 7・29~31)
妻と過ごす生活を楽しんでもいいのだ。泣くほどの辛いことがある時、泣いてもいい
のだ。嬉しさに舞い上がりそうな時は、舞い上がってもいいのだ。すべてのことにかか
わってもいい。
しかしそのすべては仮初めの幻のようなものだから、深く心に思わないことだ、と
聖パウロは警告したのである。
『中年以後』
出典: 曽野綾子著 「引退しない人生」 海竜社
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コメント
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そうなの、すべてがすり抜けていくだよ…
出会いと別れが人生のほとんどなりね…
投稿: ちゃちゃわんわん | 2017年2月20日 (月) 11時21分
かりそめの幻か。。。

確かにそうやけど
定められた時が迫っています
じゃぁどう生きる??
今を楽しく生きるのが1番
辛いからって 振り返って思い出探ししても悲しいだけ
何か楽しい事見つけて 笑って過ごそう(o^-^o)
淋しさも悲しさも きっと時が解決してくれるはず
投稿: 音姫 | 2017年2月20日 (月) 17時24分
うーむ、聖パウロ深いなあ…
そなのよね、その瞬間はその瞬間だけのもの
同じ時ってないんだよね
人も時とともに変わるし
いちいちあの時は…とこだわっていたら
疲れるだけなのよ( ˘ω˘ )
前を向いてポジティブに楽しく生きるのが一番
なかなか難しいけどさ…
投稿: ちめの | 2017年2月21日 (火) 08時53分
カブしゃん‼️
聖書を読み始めたの?
読書家だね〜!
パウロは初期クリスチャンを迫害したユダヤ教から改宗してからは
凄まじい宣教の人生を送ったけど
自分の弱さとの闘いも凄い感動させられるよね。
あたしは、パウロも好きだけど
ペテロのそそっかしさと素直さが好き。
イエスに「あなたはわたしを三度否認するでしょう。」と言われ
「誰もが裏切っても私だけは裏切りません‼️」と断言したのに
イエスの言った通りに否認し号泣‼️
でも、イエスは彼を信頼してて
「立ち直ったなら兄弟たちを強めなさい」と励まされたそうですよ。
人は誰もが弱く、後悔の連続の人生を歩んでいるけど
パウロにしてもペテロにしても立ち上がる勇気が人間にはあることを思い出させてくれるよねぇ✊🏻
だから、今は辛くてもガンバ‼️
投稿: Pee | 2017年2月22日 (水) 07時29分
年とったら、本当に失うばかりだね(* ̄ー ̄)✌
楽しく生きるのも疲れる?
投稿: のらデジ | 2017年2月23日 (木) 19時25分